【d!】心まで、透明化してよ (ページ19)

今日:334 hit、昨日:1,078 hit、合計:108,958 hit

19話ページ19

深夜

zm「…」

Aに差し込んだナイフ
彼女の熱をまだ持っていた

zm「…匂いは、せんのやな」

刃に鼻を近づけても、あいつの
匂いはしない。鉄の匂いだけ

…

zm「…」

好きだった。昔は

《あの時》まではほんまに好きだった
だから《あの時》俺は、一目散に

向かった
なのに、

zm「酷いわ…ほんま」

無能なんて、死んでしまえ

─
？？

zm「A、ほんますまん…」

「大丈夫ですよ。《1人で行けます》」
「ゾムさんは、しっかり休んでてください」

zm「ほんま、すまん。帰ったら沢山食おうな…」
「食害しないでください」

zm「…」

それじゃ、と立ち上がり
彼女の背中が遠ざかっていく

高熱を出した俺は、手すら差し出すことが
出来ずに見送るだけ

あの時、あの時、何か

なにかしていれば

こんな状況にならなかったかもしれへんな

zm『A、なんでんなこと言うんや、』

───
朝、ゾムの部屋

zm「ｯ！… 」

背中の汗が冷えて気持ち悪い
最悪な目覚めに目を手で覆い隠す

長いため息は、俺のだろうか

夢でこんなに疲労しているのは
俺なのか

zm「無能は、無能や」

zm「…透明人間も、無能やない」
zm「あいつらや、きっと」

zm「無能はんなことしない」
zm「無能は、馬鹿で、性格悪いんや

…透明人間、捕まえて
それを証明したるわ」

用意していたパーカーを
羽織、長い前髪で目を隠す
懐に、武器を何丁か用意して

ゾム。になる

zm「…Aなんて」

死んでしまえ

───
食堂

「…」

gr「…」

gr「おはよう、無能」
「ｯ……おはようございます。総統閣下」

このタイミングで声をかける理由なんて
たかが知れている。修復が遅くなってきた
体を隠すように身構えたが

閣下は、そんな無能を俯瞰するだけ
手を出さないのは何故だ、？

gr「私に向かって、防御姿勢をとるのだな」
gr「悲しいものだ」

「…要件は？」

gr「少々、尋ねたいことがあってな」

「…」

gr「ゾムに渡したパンは、トントンから
貰ったもんだろ？」
「……」

gr「…」

Aは、睨みの姿勢を崩さず
俺の質問に大して黙秘権を使った

あいつらは、
Aは無能である

という正当性を保守するために
透明人間の捜索を行わない。なぜなら

透明人間の正体はこいつしかいないからだ

A。諦めろ

お前に、無能は向いてへん

gr「ゾムは1時間で食ったらしいぞ」
gr「良かったな」

gr「あいつを、助けれて」