【d!】心まで、透明化してよ (ページ21)

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21話ページ21

ゾムの部屋

zm「…」

耳に全ての神経をあつめ
そいつが来るのを待った

食堂で大声で腹が減ったと
言ってたから来るはず

見越していたのか、そいつが
来るのはそれから1時間過ぎたあたりだった

zm「ｯ！」

ガサゴソ

ドアノブに袋がかかる音がする
ターゲットを殺す勢いで
扉を開け、

そいつのほっそい手首を掴んだ

zm「…やっぱ、お前かよ…」

無能

「…」

───

zm「…」

「…」

ゾム様の部屋に入るのは、
数ヶ月ぶりだ。《あのとき》以来か

彼の指示通り床で正座し、
監視カメラを壊していく様子を
見つめた

バレた。これは、確実に
殺される。でもそれでもいっか

嫌われたらまましねるのだから

zm「…」

ロボロの視線を全てさえぎり
律儀に正座するAの前で

あぐらをかいて同じ目線に
立った

それに一瞬驚くAは、
揺れた声色で

「椅子にでも座ったらどうです？
無能と同じ目線なんて調子狂うんでしょ。」

zm「椅子、壊れとるから」

zm「…お前なんやろ」
zm「透明人間」

「…」

zm「…俺らに、パンやったり部屋に運んだり、
してきたのはお前や」

zm「なんでんなことしてきた」
zm「お前はAは、自分で
無能になったんやろ！」

zm「なんで俺らを助ける真似ばっかするんや！」

zm「無能になりたいんか、

助けたいんかハッキリしてや」

zm「どっちつかずが1番嫌やねん！」
zm「答えろ、無能」

zm「…どっちなん…？」

「…」

あの会話を聞いていたのは彼か
…逃げ場がないけど

《あれ》を言う訳には行かない

zm「…」

Aは黙秘権を使い
何も語らない。腹が立って
つい殴りそうになる

数時間のように感じた数分
彼女が口を開いた

揺れた声色のまま
懐からナイフを取り出して

刃を自信に向けた

zm「…死ぬ気か？」
「ゾム様」

「命令があれば、私を殺せますか」

zm「…」
zm「…答え次第や」

「…」

zm「…俺は無能は殺せるけど、Aは殺せへんから」
zm「…」

「…」

「…さい」

zm「…？」

Aが何かを言った。
殺意がない手ナイフを強く握って、
ブツブツと。

「…透明人間は、私じゃないです。その人に頼まれて袋をぶら下げただけですよ。」
「第一、無能が気遣いを出来るわけがないじゃないですか。」

「そうやってすぐ人に情をかけてしまう
癖は治した方がいいですよ。」

zm「おま、……」

…

嘘や