【d!】心まで、透明化してよ (ページ28)

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28話ページ28

ht「……それもそーだな」

「いｯ……」

ひとらん様は、無能を突き飛ばし
部屋から出ていった。足先からどんどん
力が抜けていく

血を抜かれたたのは昨日なのに、
まだ血が出来てないんだ

安堵感と、堕落感で微睡む視界
誰に何を言うこともなくその世界の中に
落ちていった

───

「…ん、」

何かいい匂いがする
なんだろ、これ…

「…なにこれ」

私の顔のすぐ横にあるのは
おにぎりと、お味噌汁、そして
漬物等

普通の朝ごはんだった
身を翻してそれから距離をとる
…あまりにも普通の食べ物に
恐怖心が湧いてきた

誰、？

「…あ、なんかある…」

切り取られたメモ帳
開けば短く

《これ食べて》

「…」

「…いた、だきます」

白米は、無毒だった
絶妙な塩梅の塩加減と
コメ本来の甘みに舌が歓喜している

「…おいしい…」

お味噌汁も飲んで喉が痛くならなかった
ただのおいしい味噌汁

漬物も、なにもかも普通の
おいしい

「…ひっぐ……」

泣かないと、決めたのに
たかがご飯を食べただけで無能は
涙を落としていた。これじゃ、ロボロ様に
また呆れさせてしまう

無能の咀嚼する音と、涙をすする声が
ボロボロになった部屋の中で響いた

───
廊下

ht「…」

泣いてる

飯食っただけで、あいつ泣いてる

やはりAの飯には、誰かが
劇薬を毎回持っていたらしい。

囮で用意させた朝飯は、
二口目で吐き気がした

ロボロに頼んでそいつを調べてもらおう
躾は結構だけど俺の飯に触らないで欲しい

ht「…」

まだ泣いてる。そんなに美味しい？
普通のご飯じゃん

…

普通のご飯も、食べられなかったからか

ht「……ごめん」

そこまで追い詰めてたことを
知ろうとしなくて、ごめん

無能だけど、そのまえに人間だよな

ht「…」

Aは、ご飯を食べたあと
食器を片付け

部屋から出てきた

油断していた俺と目があい、
あわてて顔を隠した

「…ひとらん様が、作ったんですか？これ」
ht「…別に」

「…ありがとうございます」
ht「…」

ht「いいよ、それくらい」

「…失礼します」

ht「…」

ht「A、」

「…」

ht「ごめん」

「…」

「無能に、謝ることなんてないでしょ」

ht「…」

───
ht

特殊作戦、料理担当

Aが普通のご飯を泣いて食べて
たので今までの事に後悔している

無能でも、やりすぎと気づく

これからはAの健康を祈る