瓦礫1 ページ1
部長の温度を感じない一言に、思わず口を開いたまま固まってしまう。今出たら死ぬ…？いやいや、そんな子供だましのような言葉、信じるわけが無いだろう。
『部長、手痛いです……』
kn「あぁ、すまんな。でも今外に出るんやったら誰かと行き」
『べつにお腹も空いてないですし…外行きませんよ』
kn「ほうか？てかお前死にそうな顔しとるな、ウン」
クツクツと肩を震わせている部長、何笑ってんだ。ぱっと離された手首を見ると、僅かに赤く跡が残っている。部長の力加減の下手くそさに、思わずため息をこぼした。
一気に食事ムードになった談話室から出ようと扉に近づくと、今度は服の裾を控えめに掴まれる。こんな可愛い行動が許されるのは愛嬌がある子くらいだぞ…チーノくん
ci「Aさん、今日一緒に帰りましょーや」
『…タクシー代わりだと思ってるだろ』
ci「そんな事ないですって〜、Aさんの運転安心出来んねんもん！ね？」
おねがーいと小首を傾げて顔の前で両手を合わせるチーノくん。あざといし、それが様になって居るのがより腹が立つ。そしてそれに絆されそうになっている私のチョロさにも……
『やっぱダメ、今日は直帰するから』
ci「えぇー！じゃあ俺どう帰ればええんですかぁ」
『その長い足は飾りかよ、歩け』
shp「Aさんが駄目なんやったら兄さんに頼むかぁ」
栄養ゼリーを咥えながらスマホの液晶を眺めるショッピくん。鬱先生の事を兄さんと呼んでいる彼は、ほんとに人を持ち上げるのが上手だ。いや、鬱先生がチョロいだけか
談話室の面々に軽く会釈をして、部屋を後にする。少しだけ軽くなった体の節々を伸ばしながら、エーミールさんの元に戻ろうと歩みを進める。
何やら外が騒がしいと思い、ふと廊下の窓から外を覗き込む。
『う、わぁ……』
事務所前の通りで何やら事件があったようで、改めて治安の悪さを実感する。酔っぱらいのおじさんが騒いでいるようで、締め切った窓からでも外の声が聞こえてくる。
ht「今は危ないから出ないようにね」
『あっ……と。こんにちは』
ht「こんにちは、俺の事…覚えてるわけないか。俺はひとらんらん、よろしくね」
『Aです。前に一度だけ会いましたよね、あと…前世で』
ひとらんの作った野菜、美味しかったなぁ…。そんなことを考えながらポロリと言葉が漏れ出る
驚いたように目を丸くするひとらんに、思わず笑みがこぼれてしまう。どうやら私が記憶を取り戻した事は知らされていない様だ。嬉しそうに頬を緩める彼の姿に、なんだかむず痒い気持ちになる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 763人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：どどまる | 作成日時：2023年7月8日 2時
