瓦礫17 ページ17
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トントンさん曰く、帰り道などは特に不意打ちで襲われることが多いらしい。一応女性なのだからと心配の言葉をかけてくれる彼には感謝しかない。帰路も毎回同じ道を使ってしまうと自宅の特定が早まるためあまりお勧めしないそうだ。
そこまでしっかりと対策しないと身の危険から逃れられないと聞かされた時、本気でこんな職場に来てしまったことを後悔した。給料も上司も素晴らしいことに変わりないが、身の安全の保証以前に危険性が頭一つ分くらい上がった気がしている。
訓練というなの護身術の講習も終わり、一度上司であるエーミールに報告をしようと廊下を歩く。談話室から聞こえてくる部長の話し声に、少しだけ顔を覗かせようか考える。
前の職場でも一番接点の多い相手だ、ふとした時に会話したいと思ってしまうことくらいある。それにこう見えても私は部長のことはなんだかんだ頼れる人として認識しているのだ。絶対本人には言わないが。
バレないように談話室から漏れている会話に耳を傾ける。どうやら誰かと話しているようで、その特徴的な声の主は驚くほど簡単にわかってしまった。
kn「Aはほんまに何も変わっとらんかったで、こっちが呆れてまうくらいにはな」
gr「せやろな、俺も薄々気づいとったが…こちらとしても喧嘩別れにはいい思い出がないからな」
kn「そこまで思っとんやったらはよ謝れや…そこまでガキ臭い意地さっさと捨てたらええのに」
gr「今考えても俺はあの時の言葉を肯定する気はない。それは向こうも同じやろ」
二人が話している内容は偶然にも私に関することのようで、皆まで言わずとも内容はわかってしまった。どうせ前世から引きずっている例の喧嘩のことだろう。
お互い変なところで意地っ張りなのが災いしているのか、一度死んでもその性格は治らなかったようだ。
なんとなく談話室の前を通るのを憚られた私は、少しだけ遠回りになるが別の道から仕事場に戻ることにした。てっきり盗み聞きしているのがバレて呼ばれるかと思ったが、私の想像以上に彼らは会話に意識を削がれていたらしい。見つからなかったのはラッキーだ。
自分のデスクに腰掛け、真っ暗なモニターを眺めなら呟く。
『まぁ、あんな話聞いちゃったところで謝る気はないけど』
em「独り言のボリュームはもう少し抑えましょうね」
『びっ…くりした…。急に後ろに立たないでください、心臓に悪いですよ』
em「警戒心怠ったAさんに問題あると思うねんけど…っていったら怒られそうやね」
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作者名：どどまる | 作成日時：2023年7月8日 2時
