瓦礫5 ページ5
あれから特に何か起こる訳でも無く、ダラダラと惰性を貪っていると突然インターホンが鳴る。時刻は夕方頃、宅配物でも頼んでいたかと思いながら玄関に向かおうと体を起こすと、兄さんに止められる。
ni「多分俺の注文した飯」
『自由すぎるだろ』
冷蔵庫に何も無い方が悪いと生意気なことを言いながら部屋を後にする兄さん。一人暮らしの冷蔵庫なんて作り置きなんてするわけないだろう、丁寧な暮らしをしているわけでもないし、特別料理が好きな訳でもないんだから
そんなことを考えながら、再度ソファに体全体を預けるようにして横になると、玄関先から誰かの声が聞こえてくる。スマホから流れる動画に耳を傾けているが、なんだか慌てた様子の声が聞こえてくる。届けられたご飯でも違ったのかな
ni「A見て、これ連絡先」
『けっ、ナンパ自慢ですか』
ni「俺宛じゃないね、これAにやって」
その一言で思わず飛び上がる。私にも春がきたか！と舞い上がったのはほんの一瞬。顔をも知らない相手に連絡先を渡されても困ると、やけに冷めた脳がストップをかけた。
私が突如として飛び上がったことに顔色一つ変えず兄さんは受け取った袋を机に置き、そして再度口を開いた。
ni「舞い上がっているところ残念やけど、コレはこう」
『あーっ！』
ひらひらとした紙に記されていたであろう連絡先は、兄さんの手によって跡形もなく引き裂かれてしまった。突然の行動に思わず声を上げたが、別に惜しいわけではない。ただ受取人の許可無く破り捨てるのはいかがなものか。受け取ったとて連絡先を追加するとも限らないのに
ni「残念、ぽっと出の野郎にはこれくらいがちょうどええんよ」
『別に知らない人だからいいけどさ、許可くらい取ろうよ…』
ni「俺はお前の保護者でもあるからな、可愛い妹の身は守るもんやろ」
さも当然というように言葉を紡いでいるが、べつに私と兄さんは血縁関係ではない。なんなら幼馴染みでもない。たまたま同じだった部活からズルズルと引きずるように関わりを持っていた、いわば腐れ縁のようなもの。
やけに私に構ってくると思っていたが、それが私を妹だと認識していたと知ったときは卒倒するかと思った。今になっては満更でもないが、こういったほんの些細なことにも干渉してくるあたり、実際の妹だったらシスコンと貶していたことだろう。
ni「可愛い妹のためや、許せ」
『可愛い妹の意思は尊重しないんですか』
ni「なんや兄に楯突くんか」
『横暴』
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作者名：どどまる | 作成日時：2023年7月8日 2時
