瓦礫8 ページ8
眉間に親指をぐりぐりと押し付けてくるシャオロン。その厄介な腕を剥がそうとしていると、背後から声をかけられる。声の主の方を見ようとするが、何故か頭を強く固定されているため首が動かない。この馬鹿力は一体何処に隠していたのだろう。
tn「そこの二人、遊んどらんと仕事せぇ」
sha「息抜きですやん？トントンはなにしとん？」
tn「外回りして来た」
グリグリと眉間を押していた両手の親指を離したかと思えば、私の乱れた髪を軽く梳かしてくれるシャオロン。気遣いはありがたいが、その原因を作ったのはお前だからな。小さくため息をつきながらシャオロンが満足するのを待っていると、ふとトントンさんと目が合う。
どこか気まずそうにこちらの様子を伺っているかと思えば、おずおずと控えめに口を開く。
tn「あのー…Aさんとシャオロンは付き合ってたんすかね…？」
あまりに突拍子のない言葉に二人して動きが止まる。それを肯定と見たのか意外だのまさかとは思っていたがなど慌てた様子で言葉を紡ぐトントンさん。待ってくれ、なんでそんな事を思ったのかはわからないが、私達は付き合ってなんかいない。
『いや、トントンさん。私達付き合ってないですよ』
sha「せやで、今は付き合っとらんよ」
tn「あっ、あー…別れた感じや、？」
今は、なんて余計な言葉を付け足したシャオロンに軽く睨みをきかせると、ヘラヘラと楽しそうに笑うだけ。ほんとに人をイジる事になれば水を得た魚のように元気を取り戻すな、この人
『私達元々付き合ってないですし、シャオちゃんとは社会人から知り合ったんですよ』
sha「んははは、バラすんはやいて〜！せやでトントン、俺たち今は付き合ってないで」
『その匂わせみたいなのやめて、ときめかないから』
乙女心のないやつやな！なんて、失礼なことを聞き流しつつトントンさんを見る。ふむ、と何か考え込んだかのように顎に手を当てると、ふと顔を上げる。射抜くような視線はしっかりと私の目を捉えているように思えた。
tn「じゃああの合鍵は、シャオロンが盗んだって事か」
『いや、それは私が渡しました』
sha「Aから貰った」
危機感…と呆れたように呟かれたが本当にそのとおりだと思う。酔った人間に自宅の鍵を渡すなんてどうかしている、危機感欠如してるな私。
過去の自身の行動に呆れていると、ふとシャオロンが残念そうな視線を向けてきていることに気づく。合鍵ならもう渡さないぞ
sha「それだけ眼中にないってのも寂しいけどな」
そう言ってほんの少し蜂蜜の溶けたような瞳が揺れたのを、私は見て見ぬふりをした
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作者名：どどまる | 作成日時：2023年7月8日 2時
