あの爆弾魔に終止符を。【d！】 (ページ10)

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瓦礫10 ページ10

トントン side

視界の端で倒れるような動作を見せたAに、咄嗟に腕を伸ばした。情けない悲鳴とともに既のところで倒れずに済んだ姿を見て、胸を撫で下ろす。

足が痺れたというAに、思わず呆れに近いため息を溢してしまうのは仕方のない事やと思う。

腹部に回した腕にしがみつく様にしてピクリとも動かない様子を見るに、ほんまに痺れているんやろうなと考える。心配になるほど細い訳ではないが、明らかに筋肉の少なくて柔らかな腹と腰回り。

戦場から離れた女性的な肉付き。

…何変態じみたこと考えとるんや、俺は

はるか遠い記憶の中では、最前線よりその先を駆け抜けて心底楽しそうに笑うAの姿が思い出される。あのときのこいつは、人に弱みを見せまいと不安定な足場を物ともせず、ただひたすらに突き進んでいた。

そんな小さな背中に、何度も手を伸ばした事だってあった。抱えすぎるな、人を頼れと投げかけた言葉は、あのときのAには届かんかったようやけど

sha「なー、どっちの足痺れとるん？」
『無理』
sha「はい叩きまーす」
『本当にやめろ、トントンさん助けて下さい』

そう言って掴まれた腕に重心を傾けるようにして立つAに、思わず目を見開く

あれだけ人を頼ろうとせんかった相手が、今こうして俺の支えに縋っとる。その事実は言葉にしがたい刺激を脳に与えた

透明な水にインクが落とされたかのように、じんわりとゆっくりと脳が蝕まれていく感覚。支配欲にも近いそれは、あのときの感情を呼び起こすには十分過ぎるものだった

tn「A、飯食い？簡単に折れるでこれ」
『善処します…あ、治ってきた』

するりと俺の手元から離れたかと思えば、痺れていたであろう左足を軽く擦っていた。まだほんのりと体温の残った腕を見て、Aを支えていた手のひらを握っては開く

柔らかいなぁ…

sha「トントンもグルッペンとこ行く？」
tn「いや、俺は顧客情報まとめなアカンから」
sha「そう？頑張ってな！オラA行くぞ〜」
『重いっすシャオロンさん』

Aの肩を組むように後ろから飛びつくシャオロン。仲良さそうに部屋をあとにする二人を見届けると、深い溜め息をこぼした。
柄にも無く嫉妬の様なことをしてみては、行動を起こそうとしない自分に嫌気が差す。これじゃああのときと何一つ変わってへんやんけ

次は自分の手元から零れ落ちないように、あの不安定な命を取りこぼさないように。そんなことを考えながら、綺麗に仕分けられた棚に目を向けた